先生とのおはなし②
ワンナイトラブでも子供は出来る。
酔った勢いで。
冬の山小屋で身体を温め合って。
豪華客船で出会ってしまったジャックとローズが。
そこで出来てしまった父なし子はどうなるのか。
結局、
そこに医者が加担する訳にはいかないと ただそれだけの話。
それは人々が持つ出自を知る権利に絡む話。
成長した子供が自分の出自を知りたくなった場合の話。
実際、
クリニックやバンクが情報開示をしないという契約で精子を集めていた場合、精子の出所を教えるのはマズいのだが、そもそもそこは法的根拠のない状態でやっているので「わかりません」と言うしかない。
だが法的に制限することはできない。
成長した子供が「自分の父親は誰ですか」と情報開示を求めてきた時、そこに答えを出す事が出来ない。
もし"答えを出すことが出来るようにする" ということは、法的にその子供の父を決めるという事だ。
慶應病院の場合は有耶無耶になったそうだが、
もし裁判でガッツリ争われた場合、今の日本の法律だと出自を知る権利が強いため開示しなければいけない、と言われている場面ではあった。
その時に選択的シングルマザーによる精子バンク利用による妊娠で父親不在、というのを法的にキチンと言うのか、逆に「〇〇氏ですよ、でも会えませんよ」と言うのか、そこがクリアになっていない。
そこがクリアになっていないせいで、
そうなると「誰が対外受精したのか?」と言う話になりクリニックは罪に問われる可能性がある。
万が一にも「養育費をクリニックが払いなさい」となる可能性だってある。
諸々決まっていない中、それがどういう罪に問われるかさえも見えない現状。
そこが明確になればやるクリニックも多いと思うそうだ。
現に困っている人・やりたい人が多くいるわけで、その辺りを念書に書くことで治療を施すクリニックもあることはあるらしい。
しかし念書を書いたとしても産まれた子供の考え方まではコントロールすることはできないのだ。
そうなった時、その子の要望に対しての法的整備は何もなく、全員が狼狽えて押しつけあうのが関の山な現状。
目先の妊娠・目先の赤ん坊 ばかりに思いを馳せてしまいがちだが、
10数年も経てば、自分の意思を持った「人」になる事までを加味しなくてはならないと諭された気分だった。